木田　ステーキハウス「縁」はその名のとおり、縁を大事にしていきたいと思って2年前に開店したお店です。ここで食事をしていただくことで、人と人とがそれぞれの縁で繋がっていき、相乗効果が生まれることを期待しています。縁ではもちろん牛肉のブランドも大事ですが生産者やその飼育環境など、牛肉が取り扱う牛肉の背景も大切にしたいと考えています。神戸牛などのブランド牛でも、どんな餌を与えているか、どんな想いで肥育しているかなど、生産者の考え方を理解できないと、たとえブランド牛でも取り扱わないようにしています。

木田　当店では、生産者が分かるお肉を使用したステーキ（肉料理）をメインで提供しています。もちろん普通に味わっても美味しい素材をご用意しておりますが、生産地や生産者のことも含め、理解を深めて召し上がっていただきたいと思っています。また素材の良さを十分に理解し食の安全性や肉質を考慮したうえで、料理の幅も広げていきたいと考えています。よく戸田社長ともお話しするんですが、例えば天王山牛が10頭入りました。でも各々絶対に味が違うんですよ。当店に来られるお客様には、同じブランド牛でも味の違いが分かる方もおられますので、そこでお肉の品評で盛り上がるのも、一つの醍醐味と言えます。

木田　天王山牛は交雑牛（F1）の中でも甘く、そして交雑牛特有の臭みが殆どない。あと、戸田社長から伺っている飼育方法が功を奏して、他よりもヘレ肉がちょっと大きいので多種に比べると肉の張りが違いますね。天王山牧場で育った牛のヘレ肉は持っても垂れ下らないくらい張りが良い。張りの良さは繊維がしっかりしている証拠なので、必然的に柔らかな食感を愉しむことができます。育て方の過程などで全然他とは違う肉質が出来てると思いますよ。

戸田　天王山牧場では、健康な牛を育てることを最優先にした飼育を心がけています。前期はほとんど配合飼料は与えずに、チモシーヘイ（牧草）でしっかりとした胃袋を作るところから始めます。胃袋ができあがった後に、飼料を与えていくことで、質のいい肉を付け大きくしていくといった流れです。中期以降も、肉付きがよくなりやすいオリジナルの配合飼料を与えており、少しでも健康を保つために酵素も混同するようにしています。健康な牛を育てることに、とことんこだわっている感じです。

木田　当店のように指定した交雑牛を安定して仕入れる事は、なかなか出来ないと思います。神戸牛のような場合は頭数が少ないから可能ですが、通常お肉屋さんが卸す場合は、いいお肉を厳選して提供するので、産地は特定できなくなるんですよ。ただ、天王山牛に関しては特定のルートが確立できているので、当店から背景が見えるおいしさを提供できる点は、非常にポイントだと思います。それをお客様にもうたえますから。

戸田　実はこのお店には自分たちの牛を取り扱ってもらう前から通ってて、木田社長の素材や料理に対する想いも知っていたし、とにかく取引相手にまでこだわる方なので。そんな方に、気に入ってもらえたということは、正直嬉しかったです。

木田　戸田社長の肉に対する考え方が好きですね。常に真摯に向き合っている姿勢もみえる。自分たちで育てた肉を高い頻度で味見しに来てくれるんですよ。色々な牛を仕入れてますが、戸田社長みたいに食べに来てくれて、その日の味を率直に評価し合えるのも良きパートナー関係にあると感じる要因のひとつだと思います。そうやってお互いのこだわりに向き合い続けることで、お客様にもさらにレベルの高い美味しさを提供できる気がします。正直ヘレ肉は割ってみないと分からない部分もあるので。その日の良し悪しもありますが、大切なのは信頼できる生産者のお肉を提供できることだと思います。

戸田　ありがとうございます。このような形でお話しさせていただいて、いい意味でのプレッシャーと、ちょっとした自信になりました。いろんな経験や技術も蓄積されてきたので、想い描いた肉質も安定してきている手応えはあります。これからもさらにいいお肉を提供できるよう、天王山牧場の仲間と共にがんばります。